YURI /ゆり
スターバックスから見えた、ブランドが宿る場所
2026年05月30日
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要約を生成中...

5月という1ヶ月を振り返ってみると、人生のほぼ半分近く、自分の時間とエネルギーを注いだ「スターバックス」を思い出すことがとても多くありました。全く無関係のように見えるこれまでの自分の経験が、今のブランドデザインと深くつながっていることを、今月の振り返りとして書き留めておきたい。
スターバックス時代に、マーチャンダイジング業務では「モノを使って、どこに、どうやってブランドの印象を作るか」を深掘りした時期と、現場管理者として「人を通して、どこで、どうやってブランドを感じてもらえるのか」を考え、体現していた時期がありました。それらが、ブランドデザインを設計する側に立った今、不思議と「スターバックスで、私はどうやっていただろう」と考えると答えが出てくるほど、深くつながっている感覚があります。
そんな1ヶ月の中で、ひとつの問いがありました。
それは、ブランドというものは、そもそも、どういう仕組みでできているのか、ということでした。
今月、その問いを毎日のように追いかけてました。今日は、ここまでで見えてきたことを書き残しておきたいと思います。

ブランドとは、誰かがそのブランドを見た時に頭の中に生まれる「印象」や「情報」のこと。私はそう考えています。
つまり、ブランドは相手の頭の中に生まれるもの。
ということは、自分の頭の中にあるものが、相手の頭の中に届くまでの「道のり」があるということ。
そして、自分が「これが私(ブランド)」と伝えたとしても、受け手が持っている経験や固定観念によって、頭の中に生まれる印象は変わります。ということは、相手の中に何が生まれるかは、自分ではコントロールできない部分が必ず残ります。
それでは、確実に「ブランド」の印象が伝わっているスターバックスは、いつ、どこで、何をしているのか?自分の記憶を辿り、本質まで掘り下げました。
そこから見えてきたことは、
「何を伝える」のか、
「どんな言葉や行動で伝える」のか、
「どんな場面で伝えるのか」。これを特定し、明確にし、その表現を繰り返し続けることでした。
その繰り返しが、相手の頭の中に「印象」を作り上げ、ブランドというものになっていく。
そんなふうに考えていく中で、「ブランド」とは、ロゴや色でもなく、見た目の統一感だけでもない、何か別のものなんじゃないかと感じています。
スターバックスのロゴは、グリーンのサイレン(人魚の名前)だけど、「ブランド」の印象は、
いつ行っても変わらない店主の温かい笑顔があり、私の好みを覚えてくれるささやかな気遣いがあり、嘘のない誠実な仕事ぶりがある。ではないだろうか。
「スタバっていいよね。」── その確かな信頼と一貫性こそが、何よりも強力な「ブランド」なのだと感じています。
だから、「ブランド」というものの、難しいけど面白い正体が見えてきます。
冒頭に書いたように、スターバックス時代に私は現場でブランドを「体現する側」にいました。そのとき体に染み付いていたのは、こうした抽象的な価値観が、現場で働く一人ひとりの「やること」として具体的な行動に落とし込まれていた、という構造でした。
例えば、「親しみのある接客」と言葉で掲げる作業がブランディングではなく、その「親しみ」が、いつ、どこで、どんな会話で生まれるのかの一つひとつのタイミングまで、具体的に言語化することが、ブランディングなのではないかと感じます。
「親しみのあるブランド」「誠実なブランド」などの言語化はスタートなのですが、ブランドが「相手の頭の中に生まれる印象」である以上、その言葉を決定しただけでは、相手にはまだ何も届いていないのです。
だから、スターバックスはブランドが宿る場所を見つけ、言語化し、人間らしい行動指針として、体現する。ここが、スターバックスの違うところです。
「親しみ」が生まれる場所はどこか── それは現場の中の、一つひとつの接点でした。
顧客がお店に来店した時。(表情 → あー!という笑顔)絶対に誰でも嬉しい。
顧客が自分のレジに現れた時。(挨拶 → 「いつものですか?」)照れても、絶対に誰でも嬉しい。
顧客に商品を渡す時。(感謝 → 「〇〇さんのです!」)どきっとするほど、嬉しい。
顧客がお店を出ていく時。(挨拶 → 「いってらっしゃい!また明日!」)お店を出た後も、嬉しい。
顧客がお店の前を通り過ぎる時。(表情 → あー!〇〇さんだー!)お店に行っていないのに、嬉しい。
人が心理的に「親しみ」を感じる瞬間が、現場のどこで、どんな会話で生まれるのか── ここまで落とし込まれていた「親しみ」だったのです。

ここまで見てきた、自分の頭の中から相手の頭の中までの道のり── この道のり全体が、ブランディングが行われている場所なのだと、私は今そう感じています。
その道のりの中には、いくつかの「タッチポイント」が散らばっています。タッチポイントとは、相手と自分が繋がる場所、相手が自分の印象を決める場所のこと。ビジネスのかたちによって、その場所は変わります。スターバックスならお店の中で、顧客と関わる一つひとつの瞬間。オンラインでの仕事なら、スクリーンの中で行われる自分の言動や見た目。インスタグラムなら、一つひとつの投稿。
そのタッチポイントで、自分の言動(自分らしさ)が、相手の中に「印象」を作り、それが頭の中に残っていく。ブランディングは、ある一瞬の出来事ではなく、その道のりに散らばるすべてのタッチポイントで、同時に、ずっと、行われている。そう捉えてみると、ブランドはロゴやカラーといった目に見えるものだけではないことが、はっきりしてきます。
自分のビジネスにとってのタッチポイントが、どこにあるのかを知っている上で、「ブランド」を意識的に発動することが、ブランディングをしているということなのではないか、と私は感じています。
「自分はこういう人間で、こういうブランドだ」と言語化できた状態自体は、ブランディングの大切な第一歩です。ただ、その言葉が自分の家の壁に飾ったままだと、そこから先には進みません。
言語化したものが「体現される」のは、タッチポイントの中。掲げた言葉がタッチポイントで発動され、それが繰り返されることで、相手の頭の中に「ブランド」というものが、少しずつ、確かに、形になっていきます。

最後に、ブランドデザインについての、今月の私のまとめです。
ブランドというものは、外側からピカピカに飾り付けるものではない。自分の頭の中から、相手の頭の中までの「道のり」── その道のり全体で形作られていくものです。
その道のりの中に散らばるタッチポイントで、自分の自然な言動が、相手の中に「印象」を作っていく。
「これが自分のブランドだ」と言語化しても、、ブランドのロゴや色などの目に見えるものを綺麗に揃えても、「ブランド」の輪郭はできない。
なぜならブランドが宿る場所は、顧客とのタッチポイントの瞬間だからです。そのタッチポイントがどこにあるかを俯瞰して認識する。そして、そこで「ブランド」を繰り返す。
その積み重ねの中で、相手の頭の中に、「ブランド」が、少しずつ、確かに、形になっていきます。これが、ブランドデザイナーとして毎日この問いに向き合っている、いまの私の理解です。
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